薬剤師の年収は、経験10年前後、年齢では30代後半〜40代前半に頭打ちになりやすくなります。
原因は個人の努力不足ではなく、国が決める調剤報酬で薬局の売上に上限があり、昇給が役職の数で決まる業界の構造です。
しかも2026年度に新設された調剤ベースアップ評価料は、40歳以上の薬剤師と管理薬剤師を対象外としています。
「昇給は毎年数千円程度」
「管理薬剤師なのに手取りが変わらない」
そう感じているなら、転職を決める前に、自分の年収が本当に頭打ちかを確かめてください。
本記事では公的データをもとに、自分の現在地がわかる4つのチェックと、頭打ちを抜け出す4つの道を解説します。
残る・昇格する・転職するといった道ごとに失うものまで比べているので、今の職場に残るか動くかを数字で判断できます。
薬剤師の年収は30代後半〜40代前半で頭打ちになりやすい

薬剤師の年収は、経験10年目を過ぎると伸びが鈍り、年齢別では30代後半〜40代前半に横ばいが目立ちます。
一方、「何歳で頭打ち」の答えが記事ごとに違うのは、参照している調査年が異なるためです。
ここでは経験年数別のデータと、調査年による見え方の違いを確認します。
経験10年目以降は昇給ペースが鈍る
薬剤師の年収は、経験10年目を過ぎると昇給のペースが目に見えて落ちます。
経験年数別に見ると、5年ごとの伸び幅がだんだん小さくなるのが特徴です。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(国が毎年行う賃金の大規模調査)の令和6年データを経験年数別に並べると、次のとおりです。
| 経験年数 | 平均年収 | 前の区分からの増加 |
|---|---|---|
| 0年 | 409.1万円 | – |
| 1〜4年 | 493.3万円 | +84.2万円 |
| 5〜9年 | 554.6万円 | +61.3万円 |
| 10〜14年 | | | | 599.7万円 | +45.1万円 |
| 15年以上 | 647.1万円 | +47.4万円 |
10年目以降の増加は5年で45万〜47万円、1年あたり約9万円にとどまります。
賞与(ボーナス)も、10〜14年の94.1万円から15年以上の96.5万円とほぼ横ばいです。
保険薬局の一般薬剤師に限ると、平均年収は480.3万円で、前年比+0.3%にとどまりました。
年数を重ねても給料が上がらない実感は、統計にもはっきり表れています。
出典:薬剤師オンライン「保険薬局薬剤師の平均給料は4,802,997円(前年+0.3%)【中医協】」(2025年)
頭打ち年齢が記事ごとに違うのは調査年の差
「頭打ちは何歳か」の答えが記事によって違うのは、参照している調査年が異なるためです。
年齢別の平均年収は、同じ調査でも年ごとにピークの位置が変わります。
金構造基本統計調査の年齢別データを3年分並べると、次のとおりです。
| 令和5年 | 35〜39歳の648万円が山になり、 40〜44歳は624万円に下がる |
|---|---|
| 令和6年 | 50〜54歳の745万円がピークになる |
| 令和7年 | 35〜39歳598万円、 40〜44歳595万円と横ばいで、 45〜49歳の676万円がピークになる |
年齢別の平均は同じ人を追いかけた数字ではなく、その年の年齢層ごとの平均です。
転職者や時短勤務の人の割合が変わると数字も動くため、1年分のデータだけでは「○歳で頭打ち」と言い切る根拠になりません。
3年分に共通するのは、30代後半〜40代前半に伸びが平らになりやすい点です。
「薬剤師は年収が低い」は嘘、頭打ちが早いだけ

薬剤師の平均年収は、全体の平均給与を約90万円上回る水準です。
それでも「低い」と感じるのは、初任給が高い分、その後の伸びしろが小さいからです。
生涯年収で見たときの位置もあわせて確認しましょう。
平均年収は全職種より高い
薬剤師の平均年収は、全職種の平均を明確に上回っています。
ですから「薬剤師は年収が低い」という見方は、統計で見る限り当てはまりません。
国税庁の調査では、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円、正社員に限っても545万円でした。
出典:国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査結果について」
調査の種類が異なるため単純比較はできませんが、全体平均との差は約90万円あります。
都道府県別では1位の高知県が690.2万円に達し、地方ほど高い傾向も見られます。
薬剤師は「年収が低い」のではなく「伸び方が鈍い」と捉えるのが、データに沿った見方です。
初任給が高い分、伸びしろが小さい

薬剤師は新卒時点の給与が高く、その後の上がり幅が小さい職業です。
そのため、入社時に感じた「高収入」の印象と、10年後の実感にずれが生まれます。
経験年数別では、経験0年の409.1万円が1〜4年で493.3万円になり、最初の数年で84万円伸びました。
ところが10〜14年から15年以上にかけての伸びは47万円で、増え方は半分近くまで縮みます。
同年代の友人と年収を比べる機会が増える30代後半に、薬剤師は伸びが鈍る時期を迎えます。
「低い」という感覚の正体は、このタイミングのずれにあります。
生涯年収で見た薬剤師の位置
生涯年収で見ると、薬剤師の優位は初任給ほど大きくありません。
病院と薬局のあいだでも、生涯ではほとんど差がつかないのが実態です。
厚生労働省の資料では、65歳まで常勤で働いた場合の生涯年収の中央値は、
病院が2億3,280万円、
薬局が2億2,768万円
で、差は512万円でした。
労働政策研究・研修機構の推計では、大学卒の男性が60歳の定年までに受け取る賃金は約2億4,740万円です。
出典:労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2023」正誤情報(2024年)
対象の性別や年齢、集計方法が異なるため単純比較はできないものの、薬剤師が会社員を大きく上回るわけではないと読み取れます。
6年制の学費や、4年制大学より2年遅い就職を考えると、「生涯で見ると割に合わない」と感じる人がいるのも数字の上では自然です。
だからこそ、頭打ちの時期をどう過ごすかが生涯年収を左右します。
薬剤師の年収が上がらず頭打ちになるのは構造が原因

薬剤師の年収が上がらない主な原因は、
・調剤報酬で売上に上限があること
・昇給が役職ポストの数に左右されること
・需給が緩み始めていること
の3つです。
いずれも個人の努力だけでは変えにくい構造の問題にあたります。
原因の場所がわかると、取るべき対策も見えてきます。
調剤報酬で薬局の売上に上限がある
薬局の売上は国が決める公定価格に縛られるため、給与の原資にも上限があります。
薬剤師がどれだけ丁寧に仕事をしても、売上が大きく伸びる仕組みにはなっていません。
調剤報酬は原則2年ごとに、薬価はほぼ毎年改定され、そのたびに薬局の収益が左右されます。
人件費を増やしたくても、収入の上限が先に決まっている業種なのです。
同じ見解は、管理薬剤師と薬剤師の賃上げ規模が年額1万4,500円程度にとどまると指摘しています。
売上が伸びない以上、給料だけを大きく上げるのは経営上難しいのが現実です。
出典:中央社会保険医療協議会 二号委員(日本医師会)「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)結果報告に対する見解」
昇給は役職ポストの数で決まる
薬局で年収を大きく上げるには、役職に就くことがほぼ前提になります。
ところが役職の数は店舗の数で決まるため、全員が昇格できるわけではありません。
保険薬局の法人では、管理薬剤師の平均年収が726.2万円で、一般の薬剤師の480.3万円を大きく上回ります。
管理薬剤師の席は1店舗に1つしかなく、複数店舗を統括するエリアマネージャーはさらに少数です。
席が埋まっていれば、どれだけ評価されても昇格の順番は回ってきません。
「上司から頼られているのに給料が変わらない」状態は、このポスト不足から生まれます。
薬剤師の需給が緩み始めている
薬剤師の売り手市場は、少しずつ落ち着き始めています。
人手が足りなかった時代に比べ、給与を上げてでも人を集める必要性は下がりつつあるのです。
有効求人倍率は、パートを含む「医師・薬剤師等」で、2018年3月の5.35倍から2024年2月には2.34倍まで下がりました。
2026年5月時点でもパートを除く常用で2.37倍と、全職業平均の1.11倍を上回るものの、かつての勢いはありません。
業務の広がり方によって推計には幅があり、確定した未来ではありません。
ただ「資格があれば給料は上がり続ける」という前提が崩れつつあることは、数字からも読み取れます。
2026年度の調剤ベースアップ評価料は40歳以上の薬剤師が対象外

2026年6月に新設された調剤ベースアップ評価料は、薬局で働く職員の賃上げのための報酬です。
ただし対象は40歳未満の薬剤師と事務職員に限られ、管理薬剤師は年齢にかかわらず外れます。
2024年度に始まった病院向けの制度との違いや、対象外になる人が会社に確認したい点まで、あわせてまとめました。
対象は40歳未満の薬剤師と事務職員
調剤ベースアップ評価料の対象は、40歳未満の薬剤師と事務職員です。
40歳以上の薬剤師は、この評価料による賃上げの対象に含まれません。
ベースアップ評価料とは、職員の基本給を底上げする費用を、報酬への上乗せで賄う仕組みです。
薬局向けの調剤ベースアップ評価料は、処方箋の受付1回につき4点(1点10円で40円)で、2027年6月以降はその2倍で算定されます。
薬局向けの評価料が設けられたのは2026年度改定が初めてで、両者は別の制度です。
国は薬局の対象職員の賃上げ目標を、2026年度・2027年度ともに+3.2%と定めました。
39歳と40歳で扱いが分かれるため、若手との給与差が縮まる可能性があります。
出典:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)」
出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」
管理薬剤師は年齢にかかわらず対象外
管理薬剤師は、30代であっても調剤ベースアップ評価料の対象になりません。
厚生労働省の疑義解釈で、管理薬剤師は対象とならないと明記されました。
対象から外れるのは、
・事業主や開設者
・管理者
・40歳以上の薬剤師
・業務委託で働く人
です。
管理薬剤師は「管理者」にあたるため、年齢を問わず除外されます。
一般の薬剤師のままなら賃上げ目標の対象に入る一方、管理薬剤師になるとその枠から外れます。
役職手当が増えても、評価料による賃上げ分を失うことで、一般の薬剤師との差は見た目ほど開かない可能性があります。
出典:厚生労働省 保険局医療課「疑義解釈資料の送付について(その1)」(
対象外の人が会社に確認したいこと
評価料の対象外でも、給料が上がらないと決まったわけではありません。
40歳以上や管理薬剤師の処遇をどう改善するかは、会社ごとの判断に委ねられています。
評価料はあくまで対象職員の賃上げに充てるものなので、それ以外の職員の扱いは会社に直接確認するのが確実です。
具体的には、次の4点を尋ねてください。
- 40歳以上や管理薬剤師に向けた、定期昇給や手当の見直しの予定
- 評価料で縮まる若手との給与差を、どう調整する方針か
- 賞与の算定方法に変更があるか
- 次回の給与改定がいつ行われるか
薬剤師のあなたの年収が頭打ちかどうかは4つのチェックでわかる

自分の年収が頭打ちかどうかは、全体の平均年収と比べるだけでは判断できません。
過去の昇給額、
等級の上限、
同じ条件の人との比較、
賞与と手当の中身
の4点を確かめると、現在地がはっきりします。
どれも今月中に調べられるものばかりです。
過去3年の昇給額を確認する
頭打ちを見分けるいちばん確かな方法は、過去3年の基本給の昇給額を並べてみることです。
毎年の昇給が月数千円で続いているなら、給与テーブルの上限に近づいている可能性があります。
給与明細や昇給通知を見れば、基本給の推移は数分で確認できます。
賞与や手当を含めず、基本給だけを比べるのがポイントです。
この計算では、賞与を除いて年収を100万円上げるのに約17年かかります。
昇給額が年々小さくなっている場合は、頭打ちのサインとして受け止めてください。
自社の等級の上限を確認する
今の会社でどこまで給料が上がるかは、賃金規程の等級表を見ればわかります。
等級の上限に近ければ、昇格しない限り大きな昇給は望めません。
等級制度とは、職務や役割に応じて段階を分け、段階ごとに給料の上限と下限を定める仕組みです。
賃金規程を含む就業規則は、労働基準法で従業員への周知が義務付けられているため、閲覧を申し出ても問題ありません。
確認したいのは、今の等級の上限額と、一つ上の等級に上がる条件の2つです。
上限まで月1万円しか残っていなければ、数年で昇給が止まる計算になります。
昇格の条件が「ポストの空き」だけなら、自分の努力で動かせる部分は小さいと判断できます。
同じ条件の中央値と比べる
自分の年収を比べる相手は、全体の平均ではなく、同じ条件の人の中央値です。
平均は一部の高収入の人に引き上げられるため、多くの人の実感より高く出ます。
令和6年の所定内給与(残業代や賞与を除いた毎月の基本的な給与)をベースにした試算では、平均570.8万円に対し、中央値は547.1万円でした。
20万円以上の差があるため、平均と比べて落ち込む必要はありません。
保険薬局の法人に勤める一般の薬剤師なら、中央値は492.6万円です。
都道府県別の平均では東京都が538.8万円で39位と、都市部ほど低い傾向もあります。
出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査の概要」
賞与と手当の中身を確認する
年収の額が同じでも、賞与と手当の内訳によって将来の伸び方は変わります。
業績で上下する賞与の比重が大きいほど、報酬改定や業績悪化の影響を受けやすくなるからです。
給与明細や雇用契約書で、次の3点を確認してください。
– 賞与が業績連動か、月数で固定されているか
– 固定残業代(一定時間分の残業代をあらかじめ給料に含める仕組み)が入っていないか
– 管理薬剤師手当や地域手当が、賞与の計算に含まれるか
統計の平均と比べるだけでは、あなたの経験に実際いくら値がつくかはわかりません。
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## 【H2】薬剤師が年収の頭打ちを抜ける道は4つ、どれにも失うものがある
年収の頭打ちを抜ける道は、今の職場に残る、社内で役職を目指す、同業の別会社へ転職する、病院や企業など別の業態へ転職するの4つです。どの道が合うかは、頭打ちの原因がどこにあるかで決まります。それぞれの道で得られるものと失うものを、具体的な数字で比べました。
どの道が合うかは原因の場所で決まる
適な道は、頭打ちの原因が
・業界
・会社
・自分
のどこにあるかで変わります。
原因を取り違えると、転職しても同じ壁にぶつかります。
原因ごとに向いている道を整理すると、次のとおりです。
| 会社が原因 ・等級の上限が低い ・ポストが埋まっている |
同業の別会社へ転職する |
|---|---|
| 業界が原因 ・調剤報酬の上限 ・需給の緩み |
病院や企業など別の業態へ転職する |
| 自分が原因 ・経験が調剤業務に偏っている |
今の職場で在宅医療や店舗運営の経験を積む |
| 原因がはっきりしない | 外の相場を確かめてから判断する |
今の職場に残る
今の職場に残る道は、退職金や人間関係を守れる一方、年収の伸びは会社の制度次第になります。
残るなら、昇給の上限とポストの見通しを確かめたうえで選ぶことが大切です。
退職金の支給率が勤続年数に応じて上がる制度なら、長く勤めるほど有利です。
国公立病院のように、毎年月6,000〜7,000円程度の定期昇給が続く職場もあります。
一方、残っていても賃金制度が変わることはあります。
薬局が大手チェーンに買収された事例では、給与条件が下がり、待遇を理由に退職する社員が増えたという証言もありました。
残ると決めた場合も、会社の経営方針の変化には目を配っておいてください。
社内で役職を目指す
社内で昇格する道は、環境を変えずに年収を上げられる一方、ポストの空き次第で時間がかかります。
目指すなら、空きの見込みと昇格後の手当を事前に確かめておくべきです。
会社の規模によっても、役職者の年収水準は大きく違います。
医療経済実態調査(医療機関や薬局の経営状況を国が調べる調査)の第23回では、1店舗のみの薬局の管理薬剤師が約850万〜870万円だったのに対し、20店舗以上の薬局では約650万〜660万円でした。
大手ほど役職の数は多いものの、1人あたりの給与水準は抑えられる傾向が見られます。
昇格までの目安の年数を、上司や人事に率直に聞くのも有効な手段です。
管理薬剤師への昇格に伴う注意点は、後の章で詳しく解説します。
同業の別会社へ転職する
同業の別会社への転職は、頭打ちの原因が今の会社にある場合に効果を発揮します。
ただし40代以降は、役職を手放すことで年収が下がるケースもあります。
同じ薬剤師でも、勤務する地域や会社の規模で年収に差が出るのが特徴です。
都道府県別の平均では、高知県の690.2万円に対し、東京都は538.8万円でした。
一方、40代男性が一般病院へ転職して年収が100万円下がったケースもあります。
転職で年収アップするのは「提示額」であり、昇給の仕組みまで良くなるとは限りません。
応募前には、入社後の昇給ルールまで確認してください。
病院・企業など別の業態へ転職する
別の業態への転職は、業界の構造そのものから抜け出せる点が強みです。
その代わり、未経験の分野ではスタート時の年収が下がる可能性があります。
一般病院の薬剤師の平均年収は581.1万円で、保険薬局の一般の薬剤師の480.3万円を上回り、前年比も+2.1%でした。
製薬企業では、有価証券報告書(上場企業が毎年公表する報告書)の集計で、中外製薬や武田薬品工業など平均年収が1,000万円を超える会社が並びます。
ただし製薬業界では人員削減が続き、MR(医薬情報担当者)の数は2025年3月末で4万3,646人と、11年連続で減りました。
企業の求人は数が少なく、早期退職の募集では40歳以上が対象とされた例もあります。年収の高さだけでなく、雇用の安定性も比べて判断してください。
転職で失うものを減らす方法
転職で失うものは、事前の確認と交渉で小さくできます。
特に賞与と退職金は、辞める時期を少しずらすだけで受け取れる額が変わります。
転職前に確認したいのは、次の4点です。
- 賞与の支給日と、支給日に在籍している必要があるか
- 退職金が勤続年数で増える仕組みか、今辞めるといくら受け取れるか
- 転職先の提示年収に、固定残業代や一時金が含まれていないか
- 役職を維持できる求人か、入社後に昇格できる条件があるか
年収交渉や入社時期の調整は、本人からは切り出しにくいものです。
転職エージェントを通せば、条件交渉や日程の調整を代わりに進めてもらえます。
引き止めにあったときの対応も、事前に決めておくと慌てずに済みます。
年収交渉や、賞与を受け取ってからの入社時期の調整は、自分では切り出しにくいものです。
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管理薬剤師と薬剤師の年収差246万円は昇給幅ではない

管理薬剤師と一般の薬剤師の平均年収には約246万円の差がありますが、これは昇格した本人の昇給幅ではありません。
実際に上乗せされるのは主に役職手当で、残業代が減ると手取りが変わらないケースもあります。
昇格を打診されたときに確認したい条件まで解説します。
246万円は平均どうしの差
約246万円は、管理薬剤師と一般の薬剤師という別々の集団の平均を比べた差です。
同じ人が昇格して、年収が246万円増えるという意味ではありません。
一般の薬剤師は480.3万円でした。
管理薬剤師の平均には、給与水準の高い小規模薬局の管理薬剤師も含まれ、その分だけ数字が押し上げられます。
出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査の概要」
中央値で比べると、管理薬剤師は668.1万円、一般の薬剤師は492.6万円で、差は約175万円まで縮みます。
それでも差は大きく見えますが、昇格時に上乗せされるのは主に役職手当です。
統計上の差を、自分の昇給額として期待しないよう注意してください。
手当より残業代の減り方が大きいこともある
管理薬剤師になると、手当が増える以上に残業代が減り、手取りが下がることがあります。
会社が管理薬剤師を「管理監督者」として扱い、残業代を支払わないケースがあるためです。
店舗の管理を担うだけでは法律上の管理監督者にあたるとは限らず、2008年には東京地裁がファストフード店の店長を管理監督者と認めない判決を出し、「名ばかり管理職」が社会問題になりました。
試算すると、月給30万円・月160時間勤務の人の残業単価は、1.25倍で約2,340円です。
月20時間の残業代がなくなれば、毎月約4.7万円の収入減となります。
手当が月2万円なら、差し引きで月2.7万円の減少です。
昇格前に確認したい3つの条件
管理薬剤師への昇格は、条件を確かめてから受けるかどうかを決めるのが賢明です。
確認を怠ると、責任だけが増えて年収はほとんど変わらない結果になりかねません。
確認したいのは、次の3点です。
- 役職手当の金額と、残業代が今後も支払われるか
- 手当が賞与や退職金の計算に含まれるか
- 調剤ベースアップ評価料の対象外になる分を、どう補う昇給方針か
また、薬機法では、管理薬剤師がほかの薬局などで薬事の実務に就くことを原則として認めていません。
副業で収入を補う道も、昇格すると狭まります。家計の計画とあわせて、昇格のメリットを冷静に比べてください。
薬剤師の年収1000万は可能だが、届く道は限られる

薬剤師が年収1000万円に届く道は、
・製薬企業や本部の管理職
・薬局の独立開業
・地方の高年収求人
などに限られます。
いずれも、一般の薬剤師として働き続けるだけでは届かない水準です。
目指す前に知っておきたいリスクも、あわせて整理しました。
製薬企業・本部の管理職
年収1000万円に届きやすいのは、製薬企業や薬局チェーン本部の管理職です。
ただし、どちらもポストが少なく、薬局からの転職では狭き門になります。
製薬企業88社の有価証券報告書を集計した調査では、2025年度の全体の平均年収は854.2万円で、中外製薬は1,350.7万円でした。
これらは全職種の従業員の平均で、薬剤師に限った数字ではありません。
出典:AnswersNews「製薬企業 2025年度平均年収トップ20」(
薬局やドラッグストアでも、管理職のポジションでは1000万円を超える求人が見られます。
いずれも、調剤以外の実績やマネジメント経験が問われる点を押さえておいてください。
薬局の独立開業
薬局の独立開業は、経営が軌道に乗れば年収1000万円を超えうる道です。
その反面、赤字のリスクを自分で負うことになります。
小規模な薬局は給与水準が高い傾向にあり、第23回医療経済実態調査では、1店舗のみの薬局の管理薬剤師で約850万〜870万円でした。
経営者として利益を出せれば、この水準を上回るのも不可能ではありません。
一方、中医協の診療側委員の見解では、保険薬局の3割弱が赤字で、特に1店舗や2〜5店舗の薬局が厳しいと指摘されています。
開業には物件や設備、在庫の資金が必要なうえ、門前の医療機関が閉院すれば、売上は一気に落ちます。
安定した処方箋の見込みと資金計画を立てられる人に向く選択肢です。
地方の高年収求人
地方の薬局では都市部より高い年収が提示されやすく、1000万円を超える求人も見られます。
薬剤師が不足している地域ほど、給与を上げて人を集める必要があるためです。
都道府県別の平均年収でも、1位の高知県は690.2万円で、東京都の538.8万円を150万円以上上回りました。
一方、人手不足が深刻な地域ほど、1人あたりの業務量が増えやすい点には注意が必要です。
転居や単身赴任を伴う場合は、住居費や帰省費も含めた手取りで比べることが欠かせません。
提示額に、地域手当や期間限定の一時金が含まれていないかも確認してください。
目指す前に知っておきたいリスク
年収1000万円の求人には、高い給与に見合う負担やリスクが伴います。
金額だけで選ぶと、働き方や将来の安定を失うおそれがあります。
目指す前に、次のリスクを確認しておきましょう。
| 製薬企業 | 業績次第で早期退職の募集が行われる |
|---|---|
| 独立開業 | 赤字のリスクがあり、初期投資の回収に時間がかかる |
| 地方の高年収求人 | 休みが取りにくく、転居を伴う場合がある |
| 管理職 | 売上や人員の責任が重く、残業代の対象外になることもある |
協和キリンが2025年に募集した特別希望退職は、40歳以上・勤続3年以上が対象で、432人が応募しました。
高年収の職場でも、業績次第で人員が見直されることがあります。
年収と安定のどちらを優先するか、家族の事情もふまえて決めてください。
薬剤師の年収の頭打ちは勤務先と働き方で違う

薬剤師の年収の頭打ちの形は、調剤薬局・ドラッグストア・病院という勤務先や、正社員・パートという働き方で異なります。
会社の規模や役職の数、病院の開設者、ライフイベントが、年収の天井と伸び方を左右するためです。
自分に近い立場の項目から確認してください。
調剤薬局は会社の規模で給与の形が違う
調剤薬局では、会社の規模によって年収の構成が大きく異なります。
中小は月給で、大手は賞与で厚くする傾向があります。
平均年齢は10〜99人が44.3歳、1,000人以上が36.2歳で、大手ほど若手の比率が高い構成です。
中小の薬局は月給が高い分、賞与が少なく、年収の上積みが月給の昇給頼みになります。
大手は賞与の比重が大きいため、業績や報酬改定の影響を受けやすくなります。
今の会社の規模で、どちらの形の頭打ちが起きているかを見極めてください。
ドラッグストアは店長・エリア職が分かれ目
ドラッグストアでは、店長やエリアマネージャーに就けるかどうかが年収の分かれ目になります。
一般の薬剤師のまま年数を重ねても、役職がなければ伸び方は限られるのが実情です。
店長は1店舗に1人、エリアマネージャーは複数店舗に1人のため、上に行くほど席は少なくなります。
大手チェーンが多い業態なので、賞与の比重が大きい点も大手の調剤薬局と共通しています。
2025年12月には、ツルハホールディングスとウエルシアホールディングスが経営統合し、5,659店を抱えるグループが誕生しました。
統合後の賞与の算定基準や手当は、数年かけて新会社の規定にまとめられるケースが多いため、制度変更の通知には注意を払ってください。
病院は開設者によって天井が変わる
病院薬剤師の年収の天井は、病院の開設者(国・自治体・医療法人など、病院を運営する主体)によって変わります。
国公立病院は昇給が続きやすく、民間病院は病院ごとの給与制度次第です。
国公立病院では、毎年月6,000〜7,000円程度の定期昇給が続く例があります。
一方、国家公務員の病院薬剤師には、栄養士と同じ「医療職俸給表(二)」(国家公務員の医療職向けの給与表)が適用され、見直しを求める声が上がっています。
保険薬局の一般の薬剤師の伸び(+0.3%)を上回っており、初任給の低さだけで病院を判断するのは早計です。
生涯年収で見ても、病院と薬局の差はほとんどありません。
出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査の概要」
女性薬剤師は30代で横ばいになりやすい
女性薬剤師の年収は、30代で横ばいになりやすい傾向があります。
男性より早い段階で伸びが止まる点が、女性特有の頭打ちです。
令和6年のデータでは、女性薬剤師の平均年収は30〜34歳で540.1万円、35〜39歳で543.0万円と、ほとんど増えていません。
男女別の平均でも、男性651.1万円に対し女性は555.8万円で、約95万円の差です。
時短勤務の期間が長いと、役職に就くタイミングが後ろにずれることもあります。
復帰後のキャリアを見据え、時短中も評価や昇給の対象になるかを会社に確認しておくと安心です。
パート薬剤師は時給が上がりにくい
パート薬剤師は、時給の水準がそのまま年収の天井になります。
定期昇給の仕組みがない職場では、勤続年数を重ねても年収は横ばいのままです。
令和6年の賃金構造基本統計調査をもとにした集計では、パート薬剤師の平均時給は2,639円です。1日6時間・週4日・年52週働くと、年収は約329万円となります。
時給を上げるには、
・地方の求人や派遣薬剤師への切り替え
・正社員への転換
などの選択肢があります。
ただし、扶養の範囲内で働きたい場合は、時給が上がると勤務時間を減らす必要が出る点に注意してください。
働き方の希望と年収の目標をセットで考えるのが、後悔しない近道です。
年収の頭打ちに悩む薬剤師は、相場を知ってから判断すればいい
薬剤師の年収の頭打ちは、多くの場合、個人の努力不足ではなく業界と会社の構造から生まれます。
だからこそ、焦って転職するより、自分の現在地と外の相場を知ってから動くかどうかを決めるのが確実です。
最後に、今月中にできる確認をまとめます。
今月中に確認したい3つのこと
頭打ちから抜け出す第一歩は、大きな決断ではなく小さな確認です。
今月中に次の3つを済ませるだけで、残るか動くかを判断する材料がそろいます。
どれも費用はかからず、短時間で終わる作業です。
- 給与明細から、過去3年の基本給の昇給額を書き出す
- 賃金規程で、今の等級の上限と昇格の条件を確認する
- 同じ経験年数・地域の求人で、提示される年収の相場を調べる
3つを確かめた結果、今の職場に残ると決めるのも立派な選択です。
外の相場を知ったうえでの判断なら、どちらを選んでも後悔は小さくなります。
数字をもとに、自分と家族が納得できる道を選んでください。
今の職場に残ると決めるにも、外の相場を知っておくと迷いが減ります。
転職エージェントへの登録や相談は無料で、転職しない選択をしてもかまいません。
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